2013年4月16日火曜日

閉経後の膣萎縮や性交痛に対する新薬

米国食品医薬品局は2月、閉経による膣・外陰部の萎縮の症状の一つである性交痛を適応とする薬、Osphena (一般名ospemifene)を認可した。
ロイター社の記事:http://www.reuters.com/article/2013/02/26/us-shionogi-drugapproval-idUSBRE91P0UR20130226


これまで非薬物療法(オリーブオイル、膣用保湿剤など)で十分な効果が得られない膣萎縮症に対しては、エストロゲン(女性ホルモン)を使うのが一般的であった。ジェル、クリーム、リング、錠剤などのエストロゲン剤を膣に局所的に利用する。とてもよく効く。


今回の薬ospemifeneの特徴は、エストロゲンではなく、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM = selective estrogen receptor modulator) であるという点が変わっている。つまり薬自体はエストロゲンでないけれど、エストロゲン受容体を刺激することであたかもエストロゲンを投与しているのと似たような効果を出すというわけだ。


「選択的」というのは、全身のあちこちにあるエストロゲン受容体のうち、ある臓器の受容体には積極的に作用して、また別の臓器には作用しない、という、いわば「好き嫌い」のあるようすを示している。


この薬は日本の塩野義製薬の米国子会社 Shionogi Inc.によって作られている。


先月26日には、ヨーロッパ医薬品庁も、この薬の販売承認申請を受理したとのこと。こちらの適応は閉経後膣萎縮症に対する薬として。
塩野義製薬ウェブサイトより:http://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/130327.pdf


感想:

  • 膣萎縮症の対応策がひとつ増えたことはいいことだと思う。
    非薬物療法(オリーブオイルや膣用保湿剤)、従来からあるエストロゲン製剤とならんで、第3の選択肢になるかな。
  • SERMの特徴を利用しているところがとても興味深い。
  • 乳がんの既往のある人は使うべきでない、と添付文書にある。まだこの点において十分な研究がないのだから仕方ないとは思う。が、一番この薬に興味を持つのは、estrogen-dependant ながんの既往のある人でないだろうか。SERMならではの特徴を今後の研究に期待したい。
  • 使用にあたっては、血栓症や子宮体がんのリスク、ほてりなどの副作用をよく知って、吟味しておきたい。エストロゲン療法と同様に丁寧なカウンセリングは必須とおもう。
  • 親会社の塩野義製薬は日本の会社だが、日本を飛び越して米国と欧州に先にアプローチしている。日本女性はほっとかれちゃった? 日本にも膣萎縮症に悩む人は少なくないと思う。話題にしにくいことだけに、ひっそりと耐えている女性が多いかもしれない。
  • 膣萎縮症の辛さは性交痛だけの問題ではないところを忘れてはいけないとおもう。デリケートな場所の皮膚の乾燥、弾力性の低下は、ひどい痒みや不快感、また膀胱炎の頻発にもつながる。更年期症状のうち、ほてりや発汗という症状は数ヶ月から数年でだんだん落ち着くことが多いのに対し、膣萎縮症はほっておいてよくなるということはあまりない。個人差は大きいが、年齢とともにだんだん進行することも多い。生活の質にとても影響するので、これからの高齢社会のなかでますます大事な領域だとおもう。
この記事を書くにあたって参考にしたウェブサイト
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm341128.htmhttp://www.osphena.comhttp://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/120628.pdf


追記: 2013年6月17日に関連記事を書きました。
こちらです。http://koimokko.blogspot.jp/2013/06/blog-post_17.html

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